>>かおりちゃんの信行日記


第9回 御宝前様のお花の巻

かおりちゃんは、お母さんのお買い物のお手伝いをしています。

「えーと、これで忘れ物はないわね。それじゃ最後にお花を買って帰りましょうか」
お買い物リストを見ながらお母さんが言いました。

「うん!行こう行こう!」
かおりちゃんは、沢山のきれいなお花があるお花屋さんが大好きです。

「ねぇ、かおり。御宝前様のお花、どれが良いと思う?」

「うーんとね、ピンク色をしたあの小さいユリみたいなの」
かおりちゃんはこのお花が大好きです。

「それじゃあ、お母さんはこの白いお花を選ぶわね」
お母さんは花びらが沢山ついたかわいいお花を選びました。
お花屋さんにお花を包んでもらい、大切に持って、かおりちゃん達はおうちに帰りました。
おうちに帰ると、お母さんはまずお花を御宝前様の花瓶に生け始めました。

「さぁ、できた」
きれいに生けられたお花を御宝前様にお供えさせてもらい、カチカチカチッと火打ち石を打ちました。

「ねぇ、お母さん」

「なぁに?」

「私たちの方から見たらお花はきれいに生けられてるけど、御宝前様から見たらお花は裏側しか見えないよ。きれいな方を御宝前様に向けなくても良いの?」
かおりちゃんの疑問通り、確かに御宝前様の方から見ると、お花のきれいな部分は見えません。

「かおりはきれいなお花がお供えされた御宝前様を見て、どう思う?」

「うーんとねぇ、御宝前さまがすごくきれいに見えて嬉しくなる」
かおりちゃんの言葉を聞いて、お母さんが嬉しそうに微笑みます。

「その嬉しくなる気持ちを【随喜(ずいき)】っていうの。お花はね、お供えの意味もあるけれど、御宝前様がきれいに見えるように、大切に思えるように、嬉しく思えるようにさせていただくことが大切なの。これをご信心の言葉で言うと【荘厳(しょうごん)】というのよ」

「しょうごん?」

「難しそうな言葉だけど、でもすごく簡単なことなのよ。御宝前様がきれいに見えるようにお掃除したり、お花を生けたり、お供えを盛りつけたりすること、という意味なの」

「ふーん。そうなんだ」

「御宝前様はね、かおりがきれいに生けられたお花を見て、嬉しくなったり、お給仕をさせていただこうっていう気持ちになることを望んでるの。だから他のお供えや、お道具も全部私たちの方に正面が向いているのよ」

「ふーん」
お母さんに言われてかおりちゃんは改めて御宝前様を見ました。
確かにお花やお供え、お道具などの正面がこちらを向いていなかったら……きれいだなとか、嬉しいな、とかは思わなかったと思います。

「あとね、お花は【仏様の慈悲】を表しているのよ」

「じひ?」

「慈悲とはね、人を思いやる心という意味よ。お花を私たちの方に向けているのは仏様の慈悲の心が私たちに注がれていることを表しているの。それにお花は仏様の命の象徴でもあるから、お花を枯らすことは仏様の命も枯らすことになるのよ。だからいつも生き生きとしたきれいなお花をお供えさせていただくことが大切なのよ」

「へぇ、そんな意味もあったんだ」

「でもね、いくらきれいでもお供えしちゃいけないお花もあるのよ」

「え、どんなお花?」

「毒のあるお花はもちろんダメ。あと、御宝前様が怪我をされてはダメという意味で、トゲのあるバラの花もダメ。トゲを取ればバラの花でもお供えさせていただけるんだけどね」

「うわー、大変なんだ」
御宝前様の怪我の心配までしてお花を選ぶなんて、とかおりちゃんは驚きの表情をしています。
そんなかおりちゃんを見て、おかあさんがニッコリと微笑みながら言いました。

「でもね、【生きてまします御宝前様】という気持ちがあれば、全然大変なことじゃないわよ」

「そっか……。その気持ちが荘厳につながるんだね」

また1つ、お給仕について勉強したかおりちゃんなのでした。

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