第19回 春夏秋にはあるけど冬にはない、の巻
久しぶりの太陽に恵まれた日曜日。
かおりちゃん一家は朝からお出かけの用意で大忙しです。
というのも、今日はお寺で御会式が奉修されるからです。
かおりちゃんはお母さんが用意したきちんとしたお洋服を着て、家族みんなで参詣します。
物心ついた頃からいつもみんなで御会式に参詣しているかおりちゃんですが、最近、疑問に思う事があるのです。
「ねぇお母さん。どうして御会式は春、夏、秋にはあるのに冬にはないの?」
お母さんはかおりちゃんの質問に優しく答えてくれます。
「あのね、御会式は季節毎にするのじゃなくて、2月25日にお亡くなりになった門祖日隆聖人、7月17日にお亡くなりになった開導日扇聖人、10月13日にお亡くなりになった高祖日蓮聖人の御命日によせて、佛立宗のそれぞれのお寺で奉修されるのよ。ちょうど三祖聖人が亡くなられたのが春夏秋だから冬だけ御会式が無いように思えたのね」
かおりちゃんは御会式が日蓮聖人、日隆聖人、開導聖人のそれぞれの御命日に関係があることを初めて知りました。
「どうして御命日に寄せて御会式を奉修するの?」
「三祖聖人が命に関わる危険を冒してまで、私達に本門佛立宗の御信心を教えて下さったというお話を聞いた事があるかな?」
お寺の薫化会でそんなお話のビデオを見た事があるので、かおりちゃんは少しだけど知っています。
「うん。刀で切られそうになったりして大変な目にあったんだよね」
「そうよ。そうして弘めてくださった教えのお陰で、私達は正しい御信心をさせていただけて、みんな元気に楽しく暮らす事ができるのよね」
かおりちゃんは大きく頷きます。
「三祖聖人の残してくださった【御題目】を、感謝の心を込めてたくさんの人と一緒にお唱えさせていただこうという意味で、御会式は奉修されるのよ」
「感謝するんだったらいっぱい御供えさせてもらうとか、お寺をすごくきれいにするとかでもいいんじゃないの?」
「かおり、佛立宗の御信心で一番大切なことはなんだと思う?」
「え……わかんない」
「佛立宗で一番大切な事は【御題目をお唱えする事】なのよ。それに三祖聖人は御題目をお唱えする事が大切だと私達に教えてくださったの。だから自分だけでなく、たくさんの人を誘い合って御会式にお参りして御題目を一緒にお唱えさせていただくことが三祖聖人への一番のご恩返しになるのよ」
御会式が近づくと合い言葉のように「お寺にお参りしましょうね」といろんな人に言っているおばあちゃんお姿を思い出しました。
「ふーん。たくさんの人の方がいいのか」
たくさんの人で溢れかえるお寺ってお参りしにくいなぁと思っていたけど、それはとても良い事なんだとわかったかおりちゃんなのでした。