第16回 お数珠の意味の巻
ある日の休み時間、かおりちゃんはお友達と楽しくお話をしていました。
「あれ、今日子ちゃんの左手にしているの、ブレスレット?」
今日子ちゃんは左手首に、ガラスのような丸い玉の輪っかをつけています。
「違うよ。これはお守りのお数珠だよ。昨日、デパートのアクセサリー売り場で買ったんだ」
「デパートでお数珠が売ってるの?」
かおりちゃんは今日子ちゃんの言葉に驚きました。
今までお数珠はお寺にしか売っていなくて、いつも信者さんが持っているような長いお数珠しかないと思っていたのです。
かおりちゃんはおうちに帰ると、早速おばあちゃんのところにとんでいきました。
「ねぇねぇ、おばあちゃん」
かおりちゃんは早速、今日子ちゃんのお数珠のことをおばあちゃんに話しました。
するとおばあちゃんは「今はそんな時代なんだねぇ」と驚いていましたが、かおりちゃんに御宝前様のところに置いてあるお数珠を持ってくるように言いました。
「お数珠というのはね、その宗の信心をしているしるしだから宗派によって形や大きさ、珠の数が違うんだよ。佛立宗のお数珠は房が長くて、先が丸くないのが特長なんだけど、これは開導聖人が一目で佛立宗のお数珠だと分かるように、こういう形にされたんだよ」
ちょっと難しい話になるからと、おばあちゃんは老眼鏡をかけ、一冊の本を開きました。
「えーと。かおりちゃん、いつも通りお数珠をもってごらん」
かおりちゃんは言われたとおりに、お数珠を指にかけました。
「中指のところにある大きな珠2つが”釈迦如来”という法華経を説かれた仏様と、”多宝如来”という釈迦如来が解かれた法華経がもっとも尊く有り難いものだと証明された仏様を表しているんだよ」
かおりちゃんは聞いたことがない言葉にちょっと難しい顔をしています。
「右手の近くに色の変わった珠か小さい珠があって、それが末法と言われる今の時代に法華経を弘められた上行菩薩の四菩薩を表していて、左手にある短い房の10個の珠は釈尊の十大弟子、長い房についていいるやや長い形の珠は四大天王を表す、と書いてあるよ」
「それじゃあ残りの小さい珠は?」
「残りの小さい珠はいくつあると思う?」
かおりちゃんは数えてみようと思いましたが、途中で数がわからなくなってしまいました。
「小さい珠は108個あるんだよ」
「108って、除夜の鐘と一緒だね」
「そうだよ、108は人間の煩悩という、悪いことをする心の数を表しているんだよ。かおりちゃん、お数珠を持って合掌してみてごらん」
かおりちゃんは両手をあわせて合掌をしました。
「お数珠をして合掌すると、ちょうど煩悩が仏様に包み込まれた形になると思わないかい?」
ほんとだ、とかおりちゃんはビックリしました。
「人間の欲の心なんて、無くそうと思ってもなかなか無くなるものじゃないからね。だからおばあちゃんはね、佛立宗のご信心で仏様の力をお借りして、少しでも人の為や、自分の為に良い方に変わっていくようにお願いする為にお数珠を持って合掌するんだと思うんだよ」
おばあちゃんが説明してくれた内容はかおりちゃんにとって難しかったのでほとんど忘れてしまったのですが、今日子ちゃんが持っていたお数珠と自分が持っているお数珠は違っていて当然だということがわかりました。
「かおりのお数珠は合掌して悪い心を抑える為のものなんだよね」
かおりちゃんは合掌をして、おばあちゃんにニッコリと笑いました。