第10回 お灯明の意味の巻
かおりちゃんは今日もお友達と楽しく遊んで、おうちに帰ってきました。
「ただいまー」
「こら、かおり!またお部屋の電気をつけたままにして遊びに行ったね」
かおりちゃんはお友達と楽しく遊んで帰ってきたところを、いきなりおばあちゃんに怒られてしまいました。
ドアを開けて、玄関に一歩入った瞬間だったので、かおりちゃんはまだ靴を履いて、立ったままでおばあちゃんに怒られています。
「前にもおばあちゃんに電気つけたままにして怒られたでしょ?」
「はーい、ごめんなさい」
「もう電気をつけたままにしないですか?」
「はい。もう、しません」
「それじゃあ、おうちに入りなさい」
普段はとっても優しいおばあちゃん。だけど約束を破ったり、嘘をついたりしたときはとても厳しくなるのです。
「御宝前様へのご挨拶が終わったら台所においで。おやつをおいているからね」
「はーい」
かおりちゃんは御宝前様に「ただいまのご挨拶」に行きました。
「むしいらい……」
と、無始已来をお唱えしてふと顔を上げると、御戒壇の横の灯ろうに優しい光がともっているのが目に入りました。
今まで特に気にしたことはなかったのですが、この灯ろうや御戒壇の電気が消えているのを見たことがありません。
「ほかの電気はつけっぱなしにしたらダメなのに、なんで御宝前様のはつけたままでいいんだろう?」
少しでもわからないことがあったら、放っておけないのがかおりちゃんです。
かおりちゃんは急いでおばあちゃんのところに行きました。
「ねぇねぇ、おばあちゃん。御宝前様の電気は消さなくて良いの?」
「御宝前様の電気?ひょっとして、灯ろうのことかい?」
「うん。あれは電気をつけっぱなしでいいの?」
「仏様のみ教えでは、光は仏様の尊い知恵や考えをあらわしているんだよ。だから、光を消すと言うことは、仏様の知恵を消してしまうことになるから、御戒壇や灯ろうの電気はつけたままの方がいいんだよ」
「光が知恵をあらわしているの?」
「そうだよ」
うーんと、少し考える表情をしてから「こんなお話があるんだよ」とおばあちゃんは話し始めました。
「仏様の額の白い巻毛から光が放たれて、東の方向を遙か向こうまで照らし出されたんだよ。これは、仏様が悟りの知恵で全ての物事や道理をちゃんと明らかにされたということをあらわしているんだよ」
「ふーん、すごいねぇ」
「あとね、御宝前様のろうそくを灯すのは、仏様の知恵をお敬いして、その知恵を私にも授けてくださいますようにとの思いが込められているんだよ」
「そっか。わかった!」
かおりちゃんが嬉しそうにポンと手を叩きました。
「仏様の知恵を沢山もらってるから、おばあちゃんは色んなことを知っているんだね」
かおりちゃんの言葉を聞いて、おばあちゃんが少し恥ずかしそうに笑います。
「だけど、電気をつけたままで良いのは御宝前様だけだからね」
「はーい。わかってまーす」
御宝前様のお道具には、ちゃんと意味があるんだなぁと、改めて感心したかおりちゃんなのでした。