第12回 御有志って高いもの?の巻
とある日曜日、かおりちゃん一家がお寺の朝参詣にお参りをして帰ってきてからのことでした。
「ねぇねぇお母さん。お寺の【御有志】って高いの?」
かおりちゃんの質問にお母さんはすごくビックリしました。
「かおり、どうしてそんなことを聞くの?」
「今日ね、お寺で『また御有志か』って言ってる人がいたから」
お母さんはかおりちゃんの答えを聞いて、大きなため息を一つつきました。
「かおりはそれを聞いて、どう思ったの?」
「お母さん達は何も言ってないけど、御有志って嫌々するものなのかなぁって思ったの」
かおりちゃんは、どうしてお母さんはこんなことを聞くんだろうという顔できょとんとしています。
「かおり、そんな風にお寺のことを悪く言ったりするのは【口罪障(くちざいしょう)】と言って、仏様がしてはいけないよって教えてくれていることなのよ。それに【御有志】は高い安いの問題じゃなくて、喜んでさせていただいているか、そうでないかが大切なの。だからお母さんは御有志を嫌々している訳じゃないし、むしろ喜んでしているのよ」
「お母さんは喜んでいるの?」
「そうよ。例えばね、かおりはお小遣い全部をお寺の為に御有志できる?」
「えっ!……それはちょっと……できない」
かおりちゃんは小さい声で答えました。
「そうよね。私たちは自分のものを喜んで出すことがなかなか出来ないわね。でもね、喜んでそれが出来るような考え方をすることが大切なのよ。同じ”出す”にしても、喜んですると功徳を積めるし、喜べなければ功徳は積めないわね」
「功徳が積めないの?」
「そうよ。お金を出すことよりも功徳を積めないことの方がもったいないと思わない?」
「ふーん。お金よりも功徳の方が大事なんだ」
「だってお金は死んだら持っていることは出来ないけど、功徳は死んでもうずっと持っていられるすごいものなのよ」
「じゃあさ」
少し考えて、かおりちゃんはお母さんに尋ねました。
「死んだ時に功徳を持っていたらどうなるの?」
「怖いところにいかなくてもすむのよ」
お母さんはかおりちゃんにも理解できるように、なるべく簡単な言葉を選びました。
「それじゃあ、かおりがお小遣いをほんの少しでも御有志に使ったとしたら功徳を積めるの?」
「喜んでさせていただいたんだったらね」
そういってお母さんはニッコリと笑いました。